ヒトラーの震え 毛沢東の摺り足/小長谷正明

隣駅の古書店で購入。購入する時に店主より「あまり見かけない本だよ」と声をかけられた。1999年5月発行。時節柄、プーチンの健康状態があれこれ推測されたりしているが、それより前についつい職業病で映像の中の人を診断してしまう神経内科医が視察した本。専門家らではの鋭い観察や指摘が面白い。ネットの文章に慣れてしまっている身には、プロの指摘は全く違うと思わされた。また、この本を読みネットに出回るプーチンの病気の噂は素人の想像の域を出ないと感じた。

目次

震える総統
言葉を失ったボリシェヴィキ
主席の摺り足
大統領たちの戦死
芸術家、大リーガー、兵士
20世紀のファウスト博士
映像の中のリーダーたち

この本を読んで知ったこと・調べたいこと

紹介されているエピソードがどれも、組み立て方がおもしろく大変読みやすい。

録音技術をモチーフにしたモーリス・ラヴェルのエピソードの組み立て方は中でも秀逸であると思う。そしてラヴェルの晩年に現代のように気軽な録音技術があれば…と思い少し寂しくなった。

20世紀のファウスト博士、ハーラー・フォルデンの話は正直びっくりした。この本を読まなければ一生知らない話だったと思う。

次に読みたい本

同じ著者の書いた本を機会があれば読んでみたいと思う。

  • 世界史を動かした脳の病気
  • 世界史を変えたパンデミック

まとめ

20世紀のリーダーが病に蝕まれてい区描写は医学の専門家によるものなので、生々しく、アラフィフに差し掛かったこちらとしては養生しなければ…と思ってしまう。途中途中に思わず綻ぶような言い回しやエピソード等あり筆者のユーモアが感じられ、もっとこの著者の本を読んでみたいと思わせる本だった。

この本の最終章の章扉の写真は亡きロシアのエリツィン大統領である。この本が書かれた時、エリツィンは存命であり初代大統領の任期中であった。確かめる方法はないが書かれたタイミングでこの本を読んで得られる感想と戦争が始まってしまった現在に持つ感想は違うのだろうなと思う。

病によるご乱心で国の行方は決められたくないものであるが、モーリス・ラヴェルの苦しむ姿には胸が痛むんだ。脳の病に侵されてはいても、自由気ままにピアノを弾くことはできたらしいから。