承久の乱 日本史のターニングポイント/本郷和人

新書で承久の乱の名を冠した本が文春新書と中公新書と2種類あった。中公新書は歴史物が多く、唆られるタイトルだらけで憧れの新書レーベルであるが少しハードルが高い。一方文春新書は比較的ハードルが下がる。よってこの本から先に読んだ。
鎌倉殿の13人のクライマックスと思われる承久の乱について書かれた本であるが、2019年1月刊行なので、大河ドラマ放映に合わせて発行された書籍ではない。

承久の乱に至るまでの背景の説明、鎌倉幕府の成立〜源氏将軍の終焉〜北条体制の成立、摂関政治の衰退〜院政〜後鳥羽上皇の登場までにかなりのページ数が割かれており、背景を知らない読者には非常にありがたかった。

目次

第1章 「鎌倉幕府」とはどんな政権なのか
第2章 北条時政の“将軍殺し”
第3章 希代のカリスマ後鳥羽上皇の登場
第4章 義時、鎌倉の「王」となる
第5章 後鳥羽上皇の軍拡政策
第6章 実朝暗殺事件
第7章 乱、起こる
第8章 後鳥羽上皇の敗因
第9章 承久の乱がもたらしたもの

調べたいこと

承久の乱以降の鎌倉幕府、北条以外の東国武士について

次に読みたい本

  • 承久の乱 真の「武者の世」を告げる大乱/坂井孝一
  • 北条氏の時代/本郷和人
  • 頼朝と義時 武家政権の誕生/呉座 勇一

まとめ

北条氏は頼朝の外戚でもあるし、元々東国の優良な武家であったのかと思っていたが、そうでもないようだ。また、義時は時政の後継者だったわけでもなく、むしろ父を追い落としたらしい。この本では実朝暗殺の黒幕は義時とする説をとっている。(他説も多数あり)

13人の合議制は将軍の権力を抑制した。また、承久の乱以降、朝廷は武力を放棄し政治判断や訴訟の判決ができなくなる。最終的な解決は武力の最大保有者である幕府に変わった。後鳥羽上皇は武士を「上から」しか見られなかった。上級武士は動かせても現場の武士たちまでは動かせなかった。
御成敗式目は執権の権力を強化し、誰の目にも明らかな紛争解決のルールを示した。幕府は武力による支配から民を統治する存在へと変わっていった。

などなどのことを考えていると「13人の合議制&御成敗式目」と「マグナカルタ」をいずれ比較・考察してみたい。(受験は世界史だったためマグナカルタの方が実は親しみがある)

しかし、この時代の話は大河ドラマ放映もあり、その大河ドラマが(良い意味で)現代人の価値観等に寄せられて制作されているせいか、どうしても自分の現在置かれている状況と照らし合わせてしまう。
弟たちを殺し冷酷で猜疑心の強い印象のあるあの頼朝ですら挙兵の際は対面で御家人たちと信頼を伝え合っていたのだそうだ。田中角栄も選挙の際は手書きの推薦状を手渡していたと聞く。
戦で動くのも結局は人なので泥くさいやり方を惜しんではならぬということだろうか、頼朝亡きあとも角栄が倒れたあともその恩は後続の心に残り続け人を動かし続けた。人の心を掴むには情緒と泥臭さ、マメさが必要なのだろうか。

似た時代の本を立て続けに読むと本の感想なのかその時代への感想なのか渾然一体となり、わけがわからなくなるが気にしないことにしよう。